RSウイルスによる細胞変性効果

　このページではRSウイルスによる細胞変性効果について、様々な観察手法で得た画像を用いて紹介していきます。
　また、細胞変性効果に関連したコンテンツを随時公開しておりますので、このページと合わせてご覧ください。

「ウイルスによる細胞変性効果（CPE）の観察」（2024年3月5日更新）
「細胞変性効果（CPE）について深掘りしてみました」（2024年3月5日公開）

【このページの最終更新履歴】

2024.3.5　公開

RSウイルスとは

　RSウイルス（Respiratory syncytium virus）は RNAウイルスであり、エンベロープという脂質の膜を有しています。軽症の感冒様症状から下部気道感染にいたるまで様々な程度の呼吸器症状を起こすウイルスです。特に乳幼児や高齢者などで重症化しやすく注意すべき病原体です¹⁾。
　RSウイルスがHEp-2細胞に感染すると感染した細胞同士が複数融合し、1つの大きな合胞体（シンシチウム）を形成します。ある程度の大きさになると剥離し、ボールのように丸まってきます。RSウイルスが持つフュージョン蛋白により隣接する細胞の膜が融合するためとされています。

　以下、拡大表示可能な画像はクリックすると別ウィンドウで表示します。

RSウイルスが感染したHEp-2細胞

　敷石状の細胞が融合し、大きな合胞体が形成される。

6種の細胞における形態観察

　以下は当所で使用している6種の細胞にRSウイルスを接種後、4日目で観察した写真です。 RSウイルス接種、ウイルス未接種の細胞像をそれぞれ示しています。対物レンズはx10を使用しました。

RSウイルスを接種したHEF細胞

　RSウイルスによるCPEが出始めると、細胞の上にそぼろ状の点々が出てきます（矢印）。　

ウイルス未接種のHEF細胞

RSウイルスを接種したHEp-2細胞

　シンシチウムが出始めた早期の様子です。矢印はシンシチウムの一部を指しています。

ウイルス未接種のHEp-2細胞

RSウイルスを接種したVeroE6細胞

　シンシチウムの形成により、細胞が剥離して空隙（矢印）が生じています。

ウイルス未接種のVeroE6細胞

RSウイルスを接種したMDCK細胞

　MDCK細胞ではRSウイルスによる形態変化がほとんどないと考えられます。

ウイルス未接種のMDCK細胞

RSウイルスを接種したRD-18S細胞

　輪郭が分かりにくいですがシンシチウムが形成されています。RD-18S細胞ではそぼろ状の点々（矢印）が強く現れます。

ウイルス未接種のRD-18S細胞

RSウイルスを接種したGMK細胞

　シンシチウム（矢印）が形成されます。大きくなると目玉焼き様に見えることがあります。

ウイルス未接種のGMK細胞

CPEのタイムラプス撮影

　感染後の形態変化をタイムラプス撮影しました。撮影は15分おき、7日分の記録です。ウイルス未接種のHEp-2細胞の経過と比較してご覧ください。

RSウイルスに感染したHEp-2細胞のタイムラプス撮影
うまく表示されない場合はこちらにアクセスしてください。

ウイルス未接種HEp-2細胞のタイムラプス撮影
うまく表示されない場合はこちらにアクセスしてください。

RSウイルスの免疫染色

　抗RSウイルス抗体を使ってRSウイルスが感染している細胞を光らせました。
　明視野像（左側）、蛍光観察像（中央）、明視野像と蛍光観察像の合成（右側）の順に示しています。明視野像でシンシチウムが識別しにくくなっているのは、免疫染色の固定処理の工程でシンシチウムの立体感が失われてしまうためです。蛍光観察像ではRSウイルスの感染部位が緑で示されています。シンシチウムがRSウイルス陽性であることに加え、シンシチウムになっていない単独の陽性細胞（緑色に光っている細胞）が周囲に点在している様子がわかります。

対物レンズ x4