天然のから身を守る

【食材について】

1 通常食用にされているもので量の摂り過ぎによる場合

〈事例〉ギンナン
 最近ではめったに起きませんが、特に小児が多量に食べててんかん様の痙攣(けいれん)、意識喪失(いしきそうしつ)を起こすことがあります。大人ではほとんどありません。これは、ギンナンの実に含まれる 4-O-メチルピリドキシンが原因であることがわかっています。このものは化学構造がビタミンB6(VB6)に似ているので、人の身体の中でVB6の代わりに4-O-メチルピリドキシンが利用されるため、VB6欠乏症と同じ状態になるといわれています。子供が中毒しやすいのはVB6の蓄積が大人よりも少ないためと考えられています。
ギンナン
〈事例〉青梅
 青梅にはアミグダリンという青酸化合物が含まれていますので、多量に食べると痙攣(けいれん)や呼吸困難を起こすことがあります。 青梅
2 調理の不備による場合

〈事例〉ジャガイモ
 ジャガイモの芽を除けば中毒しないといわれていますが、芽だけでは不充分で、ジャガイモの皮にも注意する必要があります。特に、緑になっている皮は気を付けましょう。芽や緑の皮の部分には、毒性のあるα−ソラニン、α−チャコニンなどが含まれている可能性が高く、除去を怠ると、嘔吐、腹痛、下痢、悪寒などを生じることがあります。事例として、小中学校でジャガイモの生長を観察し、収穫後、試食したときなどに中毒を起こすことが多いようです。この場合、集団での発生があるので気を付けなければなりません。
〈事例〉豆類
 豆類には青梅のように青酸化合物が含まれているものもあるので注意が必要です。中毒症状は青梅と同様です。
また、これとは別に、生の大豆や白インゲンにはレクチンという糖タンパクが含まれていて、これを摂取すると吐気、嘔吐、下痢を起こすことがあります。レクチンは充分加熱すること(沸騰状態で5〜10分)で毒性がなくなります。生のままや不完全な加熱で中毒を起こした例がありますので気をつけましょう。
〈事例〉フグ
 皆様よくご存じのように、フグの内臓や卵巣にはテトロドトキシンという強い毒が含まれていて適切に処理しないと中毒し、命に関わります。通常、資格のある人しか調理できません。個人で調理するときは気をつけなければなりません。
 その他、ワラビやキノコについてもアク抜きや調理法が大切です。
3 食用と毒性のあるものとの誤認

〈事例〉毒草
 トリカブトとニリンソウ、スイセンとニラ、コバイケイソウとオオバギボウシ、ツキヨタケとムキタケ・シイタケ、クサウラベニタケとウラベニホテイシメジ、スズランとギョウジャニンニク、ドクニンジンとシャク、ハシリドコロとフキノトウ、タマスダレとノビルなど有毒な植物やキノコで食用のものと類似しているものが多く、これらを誤食して起きた食中毒事例がたくさんあります。これらのいくつかについては山形県衛生研究所パンフレット「毒に注意 山菜とキノコ」に掲載されています。こちらでもご覧になれます。
〈事例〉タマスダレ
 2006年に、ある小学校でノビル(食用のユリ科の植物)と間違えてタマスダレの鱗茎(球根様の部分)を食べ、吐気などの中毒症状を起こした事例がありました。タマスダレはヒガンバナ科の植物でリコリンという有毒成分が含まれています。
〈事例〉コンフリー(ヒレハリソウ)
 これまで食用として青汁などに用いていたコンフリー(ヒレハリソウ)には肝障害を引き起こすとされるピロリジンアルカロイド等が含まれているので摂取を控えるよう厚生労働省から通知が出ています。
〈事例〉モロヘイヤ
 モロヘイヤはビタミン、ミネラルが豊富に含まれていて健康には大変良い野菜です。古くから食べられているものですが、その種子には有毒成分のストロファンチジンが含まれています。種子が葉に混入し、これを食べて家畜などが中毒した例があります。
4 食用と薬用の混同

〈事例〉アロエ
 有症苦情の一つとして報告のあるものにキダチアロエがあります。キダチアロエには、バルバロインという成分が入っており、多く摂取すると下痢をする可能性があります。一般にアロエ類は薬草の一つで、下剤として用いるものですからお腹が緩くなります。
アロエ
〈事例〉ヤマゴボウ、ヨウシュヤマゴボウ
 ヤマゴボウとヨウシュヤマゴボウは薬草として根茎を商陸(しょうりく)と称し利尿やむくみに用います。これらにはフィトラッカトキシン(フィトラクシン)という毒性のあるものも含まれるので使用するには専門的知識が必要です。
 また、薬草であるヤマゴボウ科のヤマゴボウは食べられません。ところが、お土産屋さんなどでは、山菜の"ヤマゴボウ"と称して売られているものがあります。これはキク科のモリアザミなどの根を原料に用いていますので食べられます。このような名称(商品名)と原植物名の混同がありますので気を付けましょう。
 またヤマゴボウが薬草だから葉を食べれば身体にいいだろうという安易な考え方はやめましょう。このことで中毒した例があります。薬草の利用は大変難しいものです。
ヤマゴボウ
5 食用でも時期により毒性をもつ場合

〈事例〉貝毒
 典型的な例は貝の毒です。貝の毒には大きく分けて下痢性貝毒と麻痺性貝毒があります。これらの毒は有毒のプランクトンの発生と関連し、季節により毒化します。ホタテガイや蠣(かき)などは4月頃から毒化し7月頃最高となり、通常は冬期になると毒性はなくなります。一般に貝柱には毒性はなく、中腸腺(ちゅうちょうせん)と呼ばれる黒い部分に含まれますので、これを除くことが大切です。夏期にはムラサキイガイやコタマガイでも中毒が起きています。
6 食用のものが変質した場合

〈事例〉ピーナッツなどのナッツ類
 ピーナッツなどにつくカビによる毒素のアフラトキシン類は強い発ガン性があります。カビの生えたものは食べないようにしましょう。
〈事例〉油で揚げたもの
 油を用いた食品は製造してから長時間たつと油が変敗(酸敗)し、嘔吐、下痢などの原因になります。古いものは食べないように気を付けましょう。
7 食用のものと薬の相互作用

〈事例〉グレープフルーツジュースと薬
 グレープフルーツジュースとある種の薬は相互作用し薬の効き目が強くなって副作用や毒性が現れることが最近分かってきました。これは、グレープフルーツジュースの成分が一部の薬の分解を阻害して(解毒代謝酵素を阻害)、血液の中の薬物濃度を上げるからです。具体的には、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤、睡眠導入剤、抗アレルギー剤、カルシウム拮抗剤などと相互作用を起こします。
〈事例〉セントジョンズワートと薬
 セントジョンズワート(西洋オトギリソウ:ハーブまたは健康食品とされる)とある種の薬は相互作用し薬の効き目が弱くなることが分かってきました。これは、セントジョンズワートの中に含まれるヒペルフォリンという成分が一部の薬の代謝や排出を促進させるため薬が早く消失するからです。免疫抑制剤、抗てんかん剤、気管支喘息治療薬、経口避妊薬、血液凝固阻害剤などの薬と相互作用を起こします。
8 食用でも長期摂取による場合

 同じもの、同じ状態のものを継続して食べていると、健康に影響の出る可能性があります。よく知られているものでは塩分の多いものです。血圧が高くなったり、脳卒中の原因になったりします。また、熱いものを毎日我慢して食べていると(例えば、粥とか熱すぎる味噌汁)、口から喉にかけて炎症をおこし、思わぬ炎症性の病気に結びつくことがあります。

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