インフルエンザウイルスにはA型(香港型とソ連型)、B型、C型があります。大きな流行をおこして健康被害が最も大きいのがA型、次がB型です。インフルエンザ対策の柱がワクチン接種であり、ワクチンにはA型(香港型とソ連型)B型の3種類の抗原が含まれています。
  細かい話になりますが、実はB型については、現在2つの抗原性の異なるタイプが知られています。1988年に山形で分離されたウイルス株(B/山形/16/88という名前で1989-1990シーズンのワクチンにも使われました)とオーストラリアで分離されたウイルス株、B/ビクトリア/2/87の比較からこの事実が明らかにされたため、1つを山形系統、もう1つをビクトリア系統と呼んでいます。1997-1998シーズンには、ワクチンにA型2つ(香港型とソ連型)とB型2系統の4種類の抗原が入れられたこともありました。しかし、どちらの系統のB型が流行するかを予測することができれば、より効果的にワクチンを準備することができるようになります。

  私たちは、毎年県民の皆様のご協力のもと、県内のインフルエンザの流行状況について調査をしてきました。1996-1997シーズン以降のB型の流行状況を見ると、下の図のように、B山形系統が流行するシーズンとBビクトリア系統が流行するシーズンがあることが明らかです。もちろん、1999-2000シーズンのようにB型の流行が全くない年,1998-1999シーズンのように混合流行する年もあります。
 
 

  インフルエンザでは、”シーズン終了時に検出される型が次のシーズンに流行する”ことがあるとされています。例えば、B型が流行したシーズン終盤にA香港型がでてくれば、次のシーズンはA香港型が流行し、A香港型が流行したシーズンの最後にAソ連型が出現すると次シーズンはAソ連型の流行となる、といった具合です。

  私たちはこの考え方をB山形系統とBビクトリア系統の流行予測に応用できないかと考えました。同時に、山形県民の皆様の抗体調査からウイルスの変異についても検討しました(変異が大きければ流行の可能性が大きいであろうという予測ができます)。

  その結果、2000-2001シーズンの流行の主体がB山形系統で、シーズン終盤にBビクトリア系統が流行したので、2002-2003シーズンの流行はBビクトリア系統となるという流れは上記の考え方でうまく説明ができました。

  しかし、2001-2002シーズンはBビクトリア系統が流行し、終盤にB山形系統が検出され、かつ抗原変異が見られたので2002-2003シーズンの流行の主体はB山形系統であろう、という予測はあたりませんでした。

  このように、インフルエンザの流行予測は大変難しいのが現状です。しかし私たちはあきらめることなく継続して努力していきたいと思います。(Epidemiol. Infect. 132:721-726,2004 参照)
  調査の実施にあたっては、ウイルス分離用の検体・疫学調査用の血清をいただいた県民の皆様、保護者の皆様、関連医療施設のスタッフの皆様のご配慮をいただきました。ありがとうございました。

皆様のご協力どうもありがとうございました